教員の方のための残業代請求について解説します。~使用者側が主張しそうな内容とその対応方法~

教員の方には、労働時間が長く、休憩もなかなか取れないので、残業代請求をしたいという方がいらっしゃると思います。もっとも、使用者側の反論を想定すると、ご自身が残業代請求をすることができるのか疑問に思うこともあるかと思いますので、今日はこの問題の解説をします。

公立学校の教員であるか、私立学校の教員であるか

公立学校の教員であるか、私立学校の教員であるか

公立学校の教員の方の場合、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法により、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給されないとされています。その代わりに、教職調整額が支給されるという定めがあるため、公立学校の教員の方は実際の時間外労働に応じた残業代を請求することが難しいです。

他方、私立学校の教員の方であれば、時間外労働時間に応じた残業代を請求できます。

責任者や管理職は、残業代請求はできない?

責任者や管理職は、残業代請求はできない?

学校側は、責任者や管理職は残業代請求をすることはできないと言うかもしれません。しかし、残業代請求をすることができない管理職のことを管理監督者と言うのですが、そのような管理監督者に該当するためには比較的厳しい要件があります。

裁判例(例えば、育英舎事件 札幌地方裁判所平成14年4月18日判決 労働判例839号58頁等)において必要とされた要件は、

①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること

②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること

及び

③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられていること

というものでした。

また、具体的な事案を紹介しますと、日本マクドナルド事件(東京地方裁判所平成20年1月28日判決 労働判例953号10頁)においては、アルバイト従業員の採用、時給額、勤務シフトの決定等の労務管理や店舗管理を行い、自身の勤務スケジュールも決定しているファストフード・チェーン店の店長であっても、営業時間、商品の種類と価格、仕入先などについて本社の方針に従わねばならず、企業全体の経営方針へも関与していないため、「管理監督者」とは認められないと判断されました。

ですので、学校側が、管理職としての役職名を与えて、管理職であるという理由で残業代を払ってくれないということがあり得るのですが、比較的厳しい要件を満たさなければ、「管理監督者」とは言えませんので、学校側は残業代を支払う必要があります。

休憩時間中に対応をさせられる場合

休憩時間中に対応をさせられる場合

休憩時間は決められているものの、その時間に電話が鳴ったら対応しないといけないし、生徒や保護者が来たら対応しないといけないという場合、その時間は休憩時間ではなく労働時間に該当する可能性があります。

この点、裁判例を見ますと、すし屋で板前見習い、裏方として勤務していた労働者について、「客が途切れた時などに適宜休憩してもよい」とする約束だった事例について、「現に客が来店した際には即時その業務に従事しなければならなかったことからすると、完全に労働から離れることを保障する旨の休憩時間について約定したものということができない」として、休憩時間を労働時間とみなした例があります。

そのため、昼休みに電話、生徒、保護者への対応を行うという場合、その時間は労働時間とみなされる可能性があります。もっとも、休憩時間の定めがある場合、その時間に仕事をしたことを記録として残しておかなければ、定められた時間は休憩時間とみなされる可能性が高いので、きちんと記録を残すことが必要です。

部活動の顧問の業務は労働時間に該当するか

部活動の顧問の業務は労働時間に該当するか

部活動の顧問として活動している時間は労働時間には該当しないと、使用者が主張することがあり得ます。

しかし、部活動は学校教育の一環として行われており、学校が運営していますから、顧問の活動をしている時間は教員としての労働時間に該当するものと言えます。

固定残業代の主張

固定残業代の主張

学校側は手当を払っていてこれが残業代だから、もうこれ以上残業代は払えないと主張すこともあり得ます。

しかし、手当が残業代であることが、労働条件確認通知書、雇用契約書、就業規則等で定められていない場合、学校側の主張は認められない可能性があります。

まとめ

まとめ

以上の通り、教員の方の残業代請求において、学校側が指摘しそうな問題点を挙げ、これらの指摘に対応する方法について解説しました。紹介した内容は一般的な内容ですので、自分の場合の具体的な事情にかんがみると、残業代請求をすることができるのだろうかとお悩みの方は、一度、当事務所へご相談頂けますと幸いです。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉

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