残業代が発生するという意識が希薄な使用者が多い

医師には残業代が発生しないという定めがあるわけではないのですが、医師に対して残業代を支払わなければならないという意識を持っている使用者は多くありません。
そのため、賃金設定の段階で残業代の項目が設けられることは稀であり(年棒額のみの提示等)、雇用契約書や給与明細等をみても残業代に相当する項目がないとすれば、賃金の中に残業代の支払いが含まれていると判断することはできませんので、別途、使用者に対して残業代請求をすることができます。

労働時間管理がなされていないケースが多い

外来等の時間により勤務時間は事実上決まっているが病院にタイムカードが設置されているわけではないというケースがままあります。
医師も労働者であることに変わりありませんので使用者はその労働時間を把握しておかなければなりませんが、医師に対する管理意識が希薄であるがゆえに使用者による労働時間管理は徹底されていないという印象です。
残業代請求を行う場合、労働時間は労働者が立証すべきとされていますので、使用者が労働時間を把握していない場合にも労働者側で労働時間を把握しておく必要があります。
担当した外来、参加した手術・カンファレンス等の開始・終了時間を確認することである程度の労働時間は把握できるかと思いますが、より詳細にはご自身で労働時間のメモ書き等を作成する等の方法が考えられます。
それらにより所定の労働時間を超えて勤務しているということが確認できる場合には使用者に対して残業代請求をすることができます。

管理監督者に該当するとの主張がされるケースがある

部門を任されている、または、役職付きであるというような場合、相応の決定権限が与えられている、労働時間について自分でコントロールすることが可能である等の理由から、使用者が、労基法上の「管理監督者」に該当するため残業代は発生しないという主張を行うケースがあります。
ある労働者が「管理監督者」に該当する場合、残業代規制には服さない(=残業代は発生しない)とされていますが、その要件はかなり厳しく設定されています。
すわなち、「管理監督者」は、労務管理(労働条件の決定等)について経営者と一体的な立場にある者を指しますが、より具体的には、
①経営者と一体性をもつような職務権限が付与されているか
②労働時間が当該労働者の自由裁量に任されているか
③管理監督者としての地位にふさわしい待遇を受けているか
を総合的に考慮して判断されます。
勤務医の場合で考えると、最終的な決定権限を持っているのは院長等一部の人間に限られており、外来等を担当する関係で労働時間に裁量があるわけでもなく、他の医師と比較して賃金面で相当程度の優遇措置を受けているわけではないというケースが大半であると思われますので、「管理監督者」の要件を満たす医師はごく稀です。
使用者の「管理監督者」に該当するとの主張は基本的には認められませんので、ほとんどのケースで使用者に対する残業代請求を排斥する理由とはなりません。

収集すべき証拠

時間単価について

雇用契約書、労働条件通知書、賃金規程、給与明細等があります。
賃金規程以外の多くがお手元にあるかと思いますので収集の苦労は少ないかもしれません。

労働時間面について

タイムカード、手術台帳、日報、労働時間に関するメモ書き等があります。
病院においてタイムカードによる管理がされていない場合には厳密な労働時間の立証が難しくなる傾向がありますので、日頃からメモ書き等の作成をお勧めいたします。

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