紛争の内容

依頼者は、ときには月の休日0日、残業・深夜残業時間200時間超という異常な環境下で、数年間にわたって働き続けていました。それにもかかわらず、固定残業代として残業代の一部しか支払われず、支払要求にも応じてもらえなかったため、過酷な労働環境も相まって退職するに至りました。そして、これまでの会社の対応に疑問を抱き、弊所へ相談にいらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟などの経過

幸いにも、依頼者は、詳細な日報を保管していただいていました。また、それを会社に提出しており、会社もこれを受領した内容を反映させた給与明細を作成していました。そこで、タイムカードはなかったものの、当該資料をまとめ、それを基に未払残業代を1分単位で計算し、会社へ未払残業代請求をしました。
これに対し、会社側からは、固定残業代制度を導入しており、残業代は支払済であるとの反論がされました。
もっとも、弁護士としては、給与明細、就業規則、賃金規定を精査したところ、本件では、会社側から固定残業代として支払済みである旨の反論があることが容易に予想され、再反論の準備をしていました。そこで、この会社の固定残業代の定めは無効であり、残業代を弁済していないことのみならず、当該固定残業代部分は未払残業代算定の基礎、すなわち、時給を算定するための基本給の一部に過ぎないことを主張していきました。
さらに、本件は、あまりに残業時間が過大であり、全く残業代を支払おうとせず、依頼者が請求しても無視してきたことなど、会社の対応の悪質性から、裁判で争えば付加金請求も認められる可能性がある旨も主張しました。

本事例の結末

最終的に、会社側は、未払残業代全額を支払うことに同意し、一部ではありますが、遅延損害金の支払も認めるに至りました。これにより、合計600万円もの金額の支払を受けることができました。

本事例に学ぶこと

本件では、タイムカードがないという不利な状況からスタートしました。しかし、それであきらめるのではなく、客観的に認められるであろう資料を出来る限り収集することで、会社から満額の未払残業代の支払を受けることができました。粘り強く考えて交渉することが功を奏した成功事案となりました。
また、良くあることですが、固定残業代の反論が予想通り主張されました。もっとも、残業代の支払いとして、有効な固定残業代の定め・運用がなされていることは、レアケースです。そこで、判例・裁判例を基に、きちんと法律論として固定残業代の反論が認められないことを再反論することで、会社に納得してもらうことができました。
日本では、非常に多い割合で、法律上適切に残業代が支払われていないことが大半です。従業員個人が会社にその旨を主張しても、会社からは無視され、むしろ不合理な扱いを受けることが多いというのが現状です。
弊所では、未払残業代請求について、着手金をいただいていません。まずは、お気軽に弁護士に相談いただければと思います。
残業代を請求することは当然の権利です。働いた対価を支払うのは当然の義務です。どうか気後れせず、相談にお越し下さい。

弁護士 平栗丈嗣