紛争の内容
依頼者は、新たに飲食店を開業するべく、知り合いから出資を受けて業務を行っていましたが、経営赤字により、長期にわたり生活をすることができるだけの報酬を得ることができませんでした。依頼者は店を辞めるに辞められず、弊所にご相談にいらっしゃるに至りました。

交渉・調停・訴訟等の経過
初めは、出資者・その代理人弁護士との交渉を続けてきましたが、相手方は依頼者に対する損害賠償請求をちらつかせ、解決に至ることができませんでした。
相手方と依頼者との間には、強い支配従属関係があり、そもそも雇用契約ではないかと思われる事情が多数見受けられました。そうすると、店が赤字であるからといって、給与等報酬を払わなくても良いというわけにはいきません。そこで、雇用契約を前提として、未払給与請求を内容とする労働審判を申し立てました。

本事例の結末
裁判所からは、残念ながら、本件依頼者と相手方との関係は雇用契約と評価することは難しいとの心証を開示されました。ただ、依頼者の第一目標は、無報酬で延々と働くことになる店を辞め、後々相手方から損害賠償請求されることがないようにすることにありました。そこで、相互に債権債務がないことを確認する清算条項を設け、少額ではありながらも解決金をもらうことを内容とする和解をすることができました。

本事例に学ぶこと
問題解決のための裁判所の手続きの方途として、訴訟が真っ先に挙げられます。しかし、訴訟手続きには時間を要し、当事者双方とも証拠資料に乏しい場合にどのような裁判所の判断がなされるか不透明というリスクがあります。また、民事調停という方法もありますが、あくまで調停手続きであって裁判所が積極的に関与しないため、解決できるかどうか期待できないというデメリットもあります。そこで、本件では、あえて労働審判手続きを通じ、裁判所の積極的な介入を受けることで、終局的な解決に至りました。問題解決のための方法をうまく選択することで、抜本的に依頼者の希望を実現することができた事例となりました。

弁護士 平栗 丈嗣、弁護士 権田 健一郎