美容師の方のための残業代請求について解説します。~使用者側が主張しそうな内容とその対応方法~

美容師の方には、労働時間が長く、休憩もなかなか取れないので、残業代請求をしたいという方がいらっしゃると思います。もっとも、使用者側の反論を想定すると、ご自身が残業代請求をすることができるのか疑問に思うこともあるかと思いますので、今日はこの問題の解説をします。

店長や責任者だから、残業代請求はできない?

店長や責任者だから、残業代請求はできない?

使用者の中には、管理職は残業代請求をすることはできないよと言う人もいるかもしれません。しかし、残業代請求をすることができない管理職のことを管理監督者と言うのですが、そのような管理監督者に該当するためには比較的厳しい要件があります。

裁判例(例えば、育英舎事件 札幌地方裁判所平成14年4月18日判決 労働判例839号58頁等)において必要とされた要件は、
①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること
②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
及び
③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられていること
というものでした。

また、具体的な事案を紹介しますと、日本マクドナルド事件(東京地方裁判所平成20年1月28日判決 労働判例953号10頁)においては、アルバイト従業員の採用、時給額、勤務シフトの決定等の労務管理や店舗管理を行い、自身の勤務スケジュールも決定しているファストフード・チェーン店の店長であっても、営業時間、商品の種類と価格、仕入先などについて本社の方針に従わねばならず、企業全体の経営方針へも関与していないため、「管理監督者」とは認められないと判断されました。

ですので、使用者が、「店長」、「マネージャー」等の役職名を与えて、管理職であるという理由で残業代を払ってくれないということがあるのですが、比較的厳しい要件を満たさなければ、「管理監督者」とは言えませんので、使用者は残業代を支払う必要があります。

休憩時間中に対応をさせられる場合

休憩時間中に対応をさせられる場合

休憩時間は決められているものの、その時間に電話が鳴ったら対応しないといけないし、お客さんが来店したら対応しないといけないという場合、その時間は休憩時間ではなく労働時間に該当する可能性があります。

この点、裁判例を見ますと、すし屋で板前見習い、裏方として勤務していた労働者について、「客が途切れた時などに適宜休憩してもよい」とする約束だった事例について、「現に客が来店した際には即時その業務に従事しなければならなかったことからすると、完全に労働から離れることを保障する旨の休憩時間について約定したものということができない」として、休憩時間を労働時間とみなした例があります。

カット練習は労働時間に該当するか

カット練習は労働時間に該当するか

カット練習は、美容師としての技術を向上させるためのものであり、自己研鑽であるから労働時間には該当しないと、使用者が主張することがあり得ます。
しかし、使用者がカット練習をするように指示していたり、練習のスケジュールを決めていたというような場合は、練習は業務上の命令に基づいて行われていたという理由で、労働時間に該当する可能性があります。

固定残業代の主張

固定残業代の主張

ウチは手当を払っていてこれが残業代だから、もうこれ以上残業代は払えないよと主張する使用者もいます。
しかし、手当が残業代であることが、労働条件確認通知書、雇用契約書、就業規則等で定められていない場合、使用者側の主張は認められない可能性があります。

労働者ではないという主張

労働者ではないという主張

請負契約、業務請負契約、又は、面貸し契約であるため、労働者ではないから残業代請求はできないと使用者が主張することがあります。もっとも、契約は名ばかりで、実際には労働者であり、残業代は請求できるということがありますので、注意が必要です。

労働者である典型例は、
・業務を引き受けることの諾否の自由がない
・業務の内容や進め方について指揮命令を受けている
・仕事の場所や時間が定められている
・仕事の担当を他の人と代替させられない
といったものになりますので、該当する場合は労働者に該当する可能性があります。

また、支払われている報酬についても注目すべきで、額、計算方法、支払形態において労働者の賃金と似ているかを確認すべきでしょう。
例えば、
・給与所得としての源泉徴収
・雇用保険、厚生年金、健康保険の保険料の徴収
があるような場合は、労働者の賃金と似ていますので、労働者に該当すると判断できる理由の一つになると思います。

さらに、使用する器具の購入代金や経費を使用者が負担してくれているか等も、労働者該当性を判断する要素になります。これらを使用者が負担しているような場合は、労働者に該当すると判断できる理由の一つになります。

まとめ

まとめ

以上の通り、美容師の方の残業代請求において、使用者側が指摘しそうな問題点を挙げ、これらの指摘に対応する方法について解説しました。紹介した内容は一般的な内容ですので、自分の場合の具体的な事情にかんがみると、残業代請求をすることができるのだろうかとお悩みの方は、一度、当事務所へご相談頂けますと幸いです。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉
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