先日、実はよくある残業代に関する潜在的な問題として、管理職の残業代を支払わなくても良いのか、という点についてのコラムを書いたところです。
さらに進んで、「取締役」であっても、労働者と言える場合があります。小規模な家族経営を行っている会社においては、初めは一従業員として入社しながら、ある時を境に、取締役に就任することがあります。しかし、実態としては、従前の仕事内容と一切変わらず、何の経営判断についての決定権限も与えられず、名ばかりの取締役経営者となっていることがあります。
このような場合に、取締役という肩書きがあるがために、従業員(労働者)としての退職金等の受給ができないのでしょうか。

取締役の労働者性に関する最高裁判例は、合資会社の有限責任社員で「専務取締役」の名称の下に無限責任社員の職務を代行していた者について従業員を対象とする退職金規定の適用があるとされた事例で、「合資会社の有限責任社員で「専務取締役」の名称の下に代表者である無限責任社員の職務を代行していた者であっても、定款によって業務執行の権限を与えられておらず、代表者の指揮命令の下に労務を提供していたにとどまり、その代償としての金員の支払を受けていたものについては、右会社の従業員を対象とする退職金規定が適用される」(最判平成7年2月9日集民174号237頁)と判示するのみで、考慮要素等について具体的に判示したものはありません。

取締役の労働者性の判断については、裁判例をまとめて詳細な分析をしたものとして、下田敦史『「労働者」性の判断基準-取締役の「労働者」性について-』(判例タイムズ1212号34頁)があり、判断要素がまとめられて提示されています。具体的には、①法令・定款上の業務執行権限の有無、②取締役としての業務執行の状況、③代表取締役からの指揮監督の有無、④拘束性の有無、⑤提供した労務の内容、⑥取締役に就任した経緯、⑦報酬の性質や額、⑧社会保険上の取扱い、⑨当事者の認識等の各観点から分析されています。

たとえ取締役であってもあきらめることなく、お悩みの場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。